はんだ付け基礎講座 WEB版

07 ハンダゴテの選び方

ここでは、ハンダゴテの選び方についてお話します。
「今さらなんでやねん?」という意見もありそうですが

先日のセミナーで、あまりにも皆さんハンダコテ選びに無頓着なのに驚いてしまいまして、お話しする必然性を感じてしまいました。
企業の製造の方は、ある程度いいものをお使いでしょうが、それでも保守などで出張修理される方などは特に注意が必要です。


まずは、一番多いのが

1・持ち運びに便利だ
2・安い
3・ハンダゴテが悪くても腕でカバーできる

という理由で、1000円~2000円程度のハンダゴテを使っておられる方です。
中には「20年前からこれ使ってる・・」という方も居られます。
最近では100円ショップにもハンダゴテが売っていますから「これなら上等だ・・」と思われるのかもしれません。

こうしたハンダゴテには、ニクロム線ヒーターだけでなくセラミックヒーターが使われているものもあるのですが、コテ先温度の調整機能があるものは皆無です。

で・・一番問題なのはその【コテ先温度】です。先日のセミナーでもいろいろなハンダゴテのコテ先温度を実測したのですが、なんと550℃の温度を叩きだしたすごいハンダゴテもありました。

こういうハンダゴテは、電源を入れた時点で既にコテ先が赤や紫の酸化膜に覆われており、ハンダを弾くばかりでなく、一瞬でフラックスが蒸発して焼けてしまうため、まともなハンダ付けはできません。

もし腕でカバーするとなると、濡れ雑巾で、ジューッ!とコテ先を掃除しながら温度を下げておいて、コテ先温度が上昇するまでの短い時間で、ハンダ付けを完了する・・。といった技が必要になります。

でも残念ながらこれでは、良好な合金層を作り出すだけの時間が取れないですね。

にもかかわらず、こうしたハンダゴテはまるで、温度が高くなることを、「ハイパワーで、高性能の証である」かのように、パーッケージに表示しています。

ホームセンターなどでは、こうしたハンダゴテがズラリと並んでいることもあって、初心者の方が誤解しやすい環境になっています。

くれぐれも、だまされないようにしてください。


もうひとつの問題は、一般の方がハンダゴテを購入しようとした場合、こうしたハンダゴテしか選べなくなっていることです。

実はハンダゴテメーカーは、たくさんのハンダゴテを開発しています。
カタログを見てもらうとわかるのですが、たとえばHAKKOさんですとハンダゴテの種類だけで35種類、その各ハンダゴテに対してコテ先がそれぞれ10~25種類もあります。

ハンダゴテのメーカーは国内で販売されているだけでも20社程度はあるはずですから、膨大な数の組み合わせがあることがわかると思います。

本来、自分のハンダ付けの用途に合わせて、メーカー、ハンダゴテの機種、コテ先の形状を選んでいただくのが正しいありかたです。

ところが現状は、こうした選び方をできる方・・というのは、かなり少なくてたいていは、
1:ホームセンターに並んでいる中から、良さそうなものを選ぶ
2:工具屋さんや商社さんに勧められるまま
3:お客さんが指定している

・・のではないでしょうか。

こうした環境に置かれているハンダ付け業界の根本的な原因は、「ハンダ付けに対する正しい知識」の啓蒙不足にある。と私は考えています。

世間のハンダ付けに対する知識というのは20~30年前から変わっていません。
このため、せっかくハンダゴテメーカーが、いいハンダゴテを作って店頭に並べても、お客さんに「良いハンダゴテ」に対する知識が無いために、安いハンダゴテしか売れません。

そこでハンダゴテメーカーは商社さんを通して、電機メーカーへ売り込むわけですが、ここでも通常商社マンには、ハンダ付けに対する教育は行われていませんので、販売の際にハンダ付けの本質的な話をする機会はありません。
また、最近では電機メーカーでもハンダ付けに対する教育が施されている所は少ないです。
さらに、学校教育の場では「ハンダ付けとはなんぞや?」ということを教えてくれるところはほとんどありません。(先生方自身も勉強する機会がない。)
この背景には、「ハンダ付けの教科書がない」という一面もあります。(あっても、発行が20年前だったり、絶版になっていたり)

ハンダゴテはこの数年で大きく進化しています。
昔のように部品が大きくて、金物端子が主流だった時代はなんとかなりましたが現在のように、部品が小型化し密集した上、熱に弱い電子部品などが使われている基板に昔のハンダゴテを使うのは無理があります。
オリンピックのマラソン競技にゴム長靴を履いて出場するくらい無理があります。

語弊を恐れず言いますと、「温度調節機能つきのハンダゴテ」を選ぶようにしてください。そして、コテ先温度が350℃近くに調整できたほうが良いです。
最近では、電子部品の小型化が進み、基板の集積度も増しています。さらに基板は集積度を増すために、片面基板から、両面、多層へと変化しています。


※多層基板=パターン回路(銅箔)をサンドイッチのように重ね、スルーホールと呼ばれる穴の内壁の銅箔によって各層の回路を接続して回路を形成している。

(部品サイズがボールペン先端のボール程度に・・)



このため、基板はその内部にも回路となる銅箔を含んでいるため、ハンダ付けの際には、大きな熱容量が必要となってきています。

逆に電子部品は、小型化して密集しているために、大きなコテ先ではハンダ付けできなくなってきています。

大きな熱容量が必要なのに、大きなハンダゴテ(コテ先)が使えないという矛盾した条件が、ハンダ付けに求められるようになってきています。

従来の温度調節機能の付いていない「温度飽和型」と呼ばれるハンダゴテは、発熱量が大気中へ逃げる放熱量とつりあう450℃~520℃程度までコテ先温度を上げています。

このコテ先を、母材と糸ハンダに触れることにより(母材と糸ハンダへの放熱とハンダの溶解熱)一時的にコテ先温度を下げて、ハンダ付けに最適な250℃という条件を数秒間作り出してきました。

このためには、母材とコテ先の接触している面積を大きくしてやって、母材への放熱量を確保してやることや、コテ先を当てている時間をベテランの勘によりコントロールすることが必要です。

ところが、最近の基板と電子部品は前述のように変化してきており電子部品と基板の熱容量の差が極端に大きくなっています。

多層基板ではスルーホールを介してしかコテ先の熱が伝わらないために裏面のパターンの温度を250℃まで上げるためには、かなりの時間が掛かるようになってきています。

まして、部品が小さくてコテ先との接触面積が小さくなってますからなおさら、条件は悪くなっています。

こうなると、「温度飽和型」のコテ先温度が450℃~520℃もあるハンダゴテを使うとどうなるかというと、ハンダ付けに最適な温度条件を作り出す前に、こて先温度が飽和温度に近い温度まで戻ってしまいます。

電子部品の耐熱温度は300℃程度のものが多いですから、まず電子部品が危うくなります。また基板もこれほどの高熱になると損傷しやすくなります。

さらに、コテ先には酸化膜が覆いますから、さらに熱が伝わらなくなり「おかしいな?」と感じた作業者はコテ先をゴネゴネ・・と動かします。

こうして、ハンダ付け対象物を破壊するリスクが高くなります。

また、それを避けるために、早い時間でハンダ付けを修了させようとするとハンダ量が多くなり、熱不足のいわゆるイモハンダと呼ばれる不良が発生しやすくなります。

これらのことを総合して考えると、特に初心者の方は「温度調節機能つきのハンダゴテ」を選ぶようにしたほうが良いですね。

初心者=安物 という公式はスポーツでも当てはまりません。ゴルフでもスキーでも、昔の道具は難しかったですが、今の最新の道具を使えば最初からそこそこ楽しむことができます。


(はんだ付け職人が自信を持ってお薦めするハンダゴテセットです) 限定モデルです。

さて、「どんなハンダゴテがあるのか?」という具体的な話になりますと、一般の方が購入できるハンダゴテというのはそんなに多くありません。

たとえば、Googleで【温度調節機能 ハンダゴテ】と検索してみると3/14現在では6位にやっと、goot 太洋電機産業さんのPX-201-0903が出てきます。

だいたい\6000~8000円程度が価格帯となってきますが、各メーカー共にこの価格帯のハンダゴテはハンダゴテのグリップに小さなボリウムや温度ボタンが付いたものが主流です。

一般の方が、趣味でハンダ付けされる場合ならベースとなるハンダゴテはこのクラスのもので十分であると私は考えています。

ただし、後日この続きとしてお話しますが、これらのハンダゴテを十分に活用するためには、コテ先のバリエーションが重要になってきます。

「温度調節機能つきのハンダゴテ」を買っただけでは、ゴルフに例えると「いいドライバーを買った」だけに過ぎません。アイアンやパターがないとゴルフは闘えませんね。

ハンダゴテについても、交換用のコテ先のことを考慮して購入先やメーカーを選択する必要があります。

というのも、ハンダゴテ本体を店頭やWEBSHOPで安く購入できたとしても、交換用のコテ先や保守部品が手に入れられないようでは、ハンダゴテの能力を10%も引き出すことはできないからです。

そういう意味で、現在のハンダゴテメーカーさんは商社さんや代理店を通してしか販売網を持たないことが多いですから、非常に選択肢を少なくしていると言えます。

もちろん、企業にお勤めの方は商社さんを通してカタログを取り寄せれば全ての交換部品や、保守部品を取り寄せられますからたいへん恵まれています。このような背景から一般の方がハンダ付けに馴染む機会が少なくなり、一部のプロ的な方との壁ができてきたのだと私は考えています。

私は、ハンダゴテメーカーの方と話をする機会があるたび、このような話をメーカーの方たちにしてきました。それでも大きな会社さんでは簡単にシステムを変えることはできません。(取引先との関係もありますしね。)

そこで「だれかがやらねば・・」ということで、当社では『はんだ付け職人のハンダゴテセット』を創って販売を始めたわけです。

そんな中、この3月からHAKKOさんがWEBSHOPにてhttp://ec.hakko.com/すべての商品を購入できるように対応してくれました。

今後は、各メーカー共に追随してくれるようになり、一般の方がハンダゴテや道具を自由に選べるような環境になっていくと思われます。

ps: 当社でも『はんだ付け職人のハンダゴテセット』の交換部品、保守部品をすべて購入していただけるようになりました。コテ先のバリエーションも増やしています。

http://www.noseseiki.com/handakote/parts.html
これで、長らく安心してお使いいただけるようになったと思います。

温度調節機能つきのハンダゴテにも価格差がかなりありまして、「いったいどう違うの?」という点からお話します。

1、まず、先週もお話した\6000~8000円程度が価格帯となるハンダゴテのグリップに小さなボリウムや温度ボタンが付いたタイプのハンダゴテがあります。
グリップに温度調節機構を内蔵していますので、ややグリップが大きくなります。交換用コテ先は先端の金属部分だけとなりますので、価格も安く600~1300円程度で、ほぼすべての形状のコテ先を揃えることができます。持ち運びには便利です。

2、次に、価格帯が¥15,000~20,000円程度となる温度調節用のステーションが別になったタイプのステーション型ハンダゴテと呼ばれるものがあります。
このクラスのモノになると、電源に絶縁トランスを使っており、コテ先へのリーク電流などの恐れが格段に減ります。温度調節もダイヤルやデジタル式となり容易です。 コテ部もコンパクトになりますので、どっかと腰を据えて作業するには適しています。 ただし、逆に持ち運びには不便です。

また、交換用コテ先については、ヒーター内蔵式のものがあるので、購入前によく確認が必要です。ヒーター内蔵式のコテ先は価格も2,000円を超えてきます。多くのコテ先を揃えるには不利ですね。

3、さらに、この上の¥25,000円以上のクラスになると、コテ先に熱伝対が仕込まれていてコテ先の温度変化に対して、すばやく反応しコテ先温度をコントロールするようになっています。
また、コテ先温度がデジタル表示されていて、パソコンにコテ先温度の変化状況をグラフ化して表示するものもあります。
細い小さなハンダゴテなのに高出力!という矛盾を克服するために各メーカーが技術の粋を結集した最高級モデルとなります。
そのため、交換用コテ先や保守部品についても、性能重視の価格設定になっています。
したがって、特殊な用途ではんだ付け(細かいのに大きな熱容量が必要)を行わないのであれば、あまり高額なハンダゴテは必要ありません。
実際の製造ラインで使われる場合いも、ハンダゴテの性能というよりは、品質管理上のデーターとして管理するための意味合いのほうが強いかもしれません。

一般の方がハンダゴテを選択される場合、1,2のクラスのものでコテ先のバリエーションが多く、かつコテ先の価格が安くて、コテ先や保守部品が容易に入手できるもの。というのが賢い選択と言えると思います。

「結局,何選んでええかわからんわ!」という方は、こちらをどうぞ・・  必要なものは全て揃っています。
詳しくは、クリックしてください↓


(はんだ付け職人が自信を持ってお薦めするハンダゴテセットです) 限定モデルです。

半田コテ取り扱い上の注意

①: コテ先は高温になっているので、皮膚に触れるとやけどをします。 
   また、熔けて固まった半田も、1分程度は高温のままです。あわてて触れたりしないよう、注意が必要です。
②: 同じく半田コテは高温になるので、所定のコテ台に置きます。机の上や灰皿などには置かないように。
   事故の元です。 
③: 使用した後は、コテ先に少し半田を付けたまま電源を切ります。
   こうすることで、コテ先の酸化を防ぎ長持ちします。

熱容量の注意

よく使われる言葉で、「容量の大きいコテ」などという風に省略したりして使われます。

物理用語ですが、簡単に言うと熱を水などと同じように、量(体積)として考えよう・・としたものです。
イメージ的には、シャープペンシルの芯という入れ物には、熱をお湯と仮定した場合ほとんどお湯が入らないので、熱容量が小さいと言えますし、10cm角の鉄の塊であれば10cm角の入れ物にならお湯がたくさん入りますから、熱容量が大きいと言えます・・。

例えば、お風呂に入った水をこれから半田付けをしたい母材とします。ここへ熱湯を注いで、お風呂の湯を温めようとするわけですが、熱湯の入ったヤカンを半田コテだと思ってください。

ここで、お風呂の持つ熱容量はお風呂の大きさに比例します。小さいお風呂なら、少しの熱湯で温まりますし、大きなお風呂なら多量の熱湯を注がなければ水は温まりません。

また、ヤカンの持つ熱容量もヤカンの大きさに比例しており、大きなヤカンなら多量のお湯を注ぐことが出来ます。

一般的に熱容量の大きい物は、熱しにくく冷めにくいですし、熱容量の小さいものは瞬時に熱くすることができますが、冷めるのも早いです・・。

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